小売現場のニーズが生んだ、新たな映像検索の仕組み
レジ業務に関するトラブルで目立つのは、お札の受け取り間違いや釣銭の渡し間違いです。お客様の勘違いと従業員のミスの双方が考えられるだけに、特にスーパーやコンビニエンスストアはトラブル対応に苦慮してきました。
長年の課題解決に大きな役割を果たしたのが、ジャーナル連動映像検索システムでした。その最大の特長が、POSレジ上部に設置した高解像度カメラで撮影した映像が即座に検索できる点。映像という客観的事実に基づいた対応は、お客様に納得してもらい、従業員をさまざまなトラブルから守る上で大きな意味を持ちます。セルフレジ、セミセルフレジの会計トラブルの解決策という点からも、小売の現場において欠かすことができない存在になろうとしています。
ではジャーナル連動映像検索システム「ジャナライズ」ではどのように映像を検索することを可能にしているのでしょうか。「ジャナライズ」ではPOSレジのジャーナルデータと映像を連動させて記録します。レジNoや取引Noのほか、商品名などのフリーワードでジャーナルデータを検索することで、迅速に該当の取引の映像を再生します。
映像検索システムは、作業等のログと映像を突き合わせることで、小売だけでなくさまざまなシステムに連携することが可能となります。この特長は、小売の現場で鍛えられた映像検索の仕組みの新たな可能性にもつながっています。
ジャーナル連動映像検索システム ジャナライズ


縦横自在なアングルで高精細な画像を保存します
お客様の一言で気づいた新市場
その第一歩は物流分野における活用でした。映像検索システムの商品開発を手掛ける東芝テック株式会社 リテール・ソリューション事業本部 マーケティング統括部の羽切 敏明はその経緯をこう振り返ります。
「ジャナライズの新たな可能性に気づくきっかけは、6年ほど前に当社の展示会ブースを訪れたある物流会社様からのリクエストでした。その物流会社様は注文品を専用ボックスに入れて配送していますが、入れ間違いや漏れに関連する問い合わせが課題とのことでした。録画した作業映像を、即座に検索再生できるような仕組みはできないだろうかというのです。当時は、なるほど、そんな使い方もあったのかと思いましたね」
羽切を中心にしたプロジェクトチームは、即座に取り組みを開始。物流業務に対応した映像検索システムは、入念な稼働検証を経て、リクエストの1年余り後に本稼働を開始し、大きな成果を挙げています。
その効果としてまず挙げられるのが、顧客対応の品質向上です。お客様からのお問い合わせに対し、時間をかけず映像で作業確認ができることは、サービス品質向上に確実に貢献します。ところが、効果はそれだけではありません。
「一例が、作業効率向上への貢献です。倉庫内作業に限らず、ベテランスタッフと新人では生産性に大きな違いがあることが一般的ですが、映像を分析することで、速さの理由を知ることも可能になります。その知見の共有は、生産性の底上げにもつながります。また、映像として記録することが、ケアレスミスの削減にもつながっているというお話をいただいています」
モーション検知機能を併用することで、夜間の防犯カメラとしても活用できる点にも注目です。生物の動きにも反応するため、異物混入の対応策としても大きな役割を果たすことも期待されています。また、物流分野向け映像検索システムは、上位システムとの連携ソリューリョンのほか、検品台「検品大助」のオプションとしても提供されています。
モノづくり現場の技能継承にも貢献
東芝テックの映像検索システムは、物流分野だけでなく、モノづくりの現場における活用もスタートしています。
「現時点での活用は、加工漏れやネジ止め漏れ、同梱漏れなどのケアレスミスへの対応が主ですが、物流分野同様、生産性向上への活用も今後は期待されています。若年労働力不足もあり、近年、国内モノづくり企業の多くが技術継承という課題に直面しています。映像検索の仕組みによる、熟練技能者の動作分析はその解決策としても注目されています」
関連して注目しておきたいのが、一昔前では考えられなかったネットワークカメラの解像度の急速な進歩です。鮮明さを維持したまま作業者の手元を拡大できるため、一つのカメラの映像を多様な分析に活用することが可能です。
今後の課題としては、AIや自動認識技術との連携による、生産性向上への貢献です。特にコロナ禍を受け、成長が加速する宅配ビジネス分野において業務の効率化や作業の標準化が大きな課題になっています。その解決に映像とAIを組み合わせたソリューションは大きな意味を持つはずです。
「当社の映像検索システムの強みは上位システムを変更、修正することなく、小売の世界で培ってきた仕組みが連携できる点にあります。現在は物流分野を中心に、モノづくりの現場や調剤薬局などで導入が進んでいますが、我々が気づいていないニーズもまだまだ多いはずです。『お客様の課題解決にこの仕組みが役立てられるのでは』というパートナー様、SIer様には、ぜひお気軽にお声がけいただきたいと考えています」
顧客対応の品質向上、そして多くの日本企業が直面する働き方改革、生産性向上に関する課題解決に映像検索システムが役立っています。
物流分野での活用例

医療分野での活用例
