バーコードから始まった2社の協業
1972年に16ミリ映写機の製造からスタートした同社は、映写機市場が斜陽化した1980年代以降、エンコーダーと呼ばれる計測機器の製造へとシフトします。しかし少量多品種を前提とするエンコーダー製造における部品在庫管理の煩雑さは、映写機の比ではありませんでした。代表取締役の中村 拓実氏はこう説明します。
「エンコーダー製造には多くの部品が必要ですが、その管理は当初、紙と鉛筆の人海戦術で行っていました。生産管理システム導入はその大幅な省力化を可能にしましたが、一方で新たな課題として浮上したのが11桁の部品コード入力でした。ピッキングなどの際に手入力しようとすると、誤入力が生じることがその理由です」
注目したのがその頃、物流・小売業界を中心に活用が進むバーコードソリューション。そのパートナーとして同社が選んだのが、小売業界を中心にバーコードによる自動認識ソリューションを幅広く提供する東芝テックでした。それが今日まで続く、両社の関係の始まりでした。
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代表取締役 中村 拓実氏 -
自社製品をストックするフロアには多数の部品が管理されている
両社のエンジニアの協業で誕生した新システム
当時の状況を知る常務取締役の木村 裕二氏はこう振り返ります。
「開発は当社のエンジニアが伊豆の東芝テック事業所に毎日通ってプログラムを組む一方、東芝テックのエンジニアが週に何回も飯田まで足を運ぶという密接な協力関係で進みました。当社だけでなく、東芝テックさんも本腰を入れて取り組んでいただけたことが強く印象に残っています」
およそ1年に及ぶ開発期間を経て、バーコードによる自動認識ソリューションを取り入れた生産管理システムが構築されたのは1991年のこと。同社は、「SMART」の名で独自開発したシステムの技術を応用した「自動認識ソリューション」の販売も開始しましたが、その事業は当初販売網の弱さもあり苦戦が続いたといいます。その状況を大きく変えるきっかけになったのが、東芝テックとの代理店契約でした。現在も、東芝テックは同製品の販売に大きな役割を担っています。
ものづくり企業が自社の課題を解決するため構築したシステムを原点として、30年にわたりさまざまなユーザーの課題に向き合い、解決していく中で培ったノウハウこそが生産管理パッケージ「SMARTPACK」の第一の強み。当初からの特長である自動認識ソリューションとの連携は、今後、RFIDとの連携にも応用される。
「新規案件に限ると、RFID対応ソリューションの依頼が圧倒的に多くなっています。単にバーコードを代替するのではなく、一括読み取りによる棚卸の省力化や外からは見えない部品の読み取りなど、RFIDならではの機能に注目した相談が多いですね」(木村氏)
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常務取締役 木村 裕二氏 -
工場には大型の製造機器が所狭しと配備されていた
製薬業界向け製品にも東芝テック製品を活用
バーコードを起点に多様な自動認識ソリューションを提供する同社は、現在、画像認識技術を活用したラベル検査ソリューションに力を入れています。医療・医薬品業界では、薬機法に基づくラベル印字について厳格な検査が求められていますが、目視による検査には限界があるのが実情です。この課題に対応した、東芝テック製プリンタと高精度検査カメラ等によるラベル検査ソリューション「LaVeri」シリーズは、医療・製薬業界において高い評価を得ています。
「東芝テック製品の魅力の一つは、しっかりと作り込まれたハードウェアにあると考えています。そこに当社のソフトウェアを組み合わせることで、人手不足対策をはじめ、新たな価値を創造していきたいと考えています」(木村氏)
またRFID対応検品台やピッキングカートなどの東芝テックのハード開発では、同社の精密加工部門が大きな役割を果たしています。バーコードによる自動認識ソリューションから始まったWin-Winの関係はこれからも続きます。
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ロボットアームによる自動ラベル貼付ソリューションでも協業している -
自社製品の管理はバーコードによる生産管理システムで行っている -
バーコードの出力には東芝テックのラベルプリンタを採用