スマートレシートで収集する購買データから、各人に見合った効果的な食事や栄養をアドバイス。企業や自治体の健康経営や健康寿命の延伸を支援

Club-TEC

2022年3月3日

株式会社東芝 浜松町・川崎本社事業所社員食堂

株式会社東芝 浜松町・川崎本社事業所社員食堂

「健康経営」と呼ばれる従業員等の健康管理を戦略的に実践することや、健康寿命の延伸に向けた取り組みが注目されています。これら健康分野への取り組みにスマートレシートが貢献しています。スマートレシートで収集した購買データをもとに、健康状態に応じた食事や栄養のアドバイスを行う実証実験の概要をレポートします。

  • 実験時期

    2021年に計画中

  • 実験目的

    スマートレシートを活用した健康経営施策の有効性実証

  • 課題

    未病・健康無関心層の行動変容促進

    個人に寄り沿った動機付けと食事を中心とした日常生活の中での継続的意識付け

  • 効果

    健康経営による生産性・ES(従業員満足度)の向上

    医療費の削減

疾病リスクを低減する食事や栄養アドバイスを提供

心身のちょっとした不調が、仕事のパフォーマンスに影響することは珍しくありません。また生活習慣病の予防という観点では、食生活や運動不足の改善は大きな意味があります。従業員の健康管理を経営的視点で捉え、戦略的に実践する健康経営に着目する企業も増えています。

こうした中、スマートレシートで取得した購買データをもとに、効果的な食事や栄養アドバイスを行う健康経営施策の実証実験が東芝浜松町・川崎本社の社員食堂を舞台に計画検討されています。その仕組みは、複数のシステム・サービスの組み合わせで成り立っています。

東芝グループでは、1年分の健康診断結果から生活習慣病の発症リスクを6年先まで予測する「疾病リスク予測AIサービス」(*1)を提供しており、このリスクを下げる「生活習慣改善ソリューション提案AI」(*2)によって、体重減少や生活習慣(運動や飲酒量など)の改善案を提示します。

疾病リスク予測AIと生活習慣改善ソリューション提案AIを組み込み、さらに社員食堂で取得される喫食データを基に行われる食事アドバイスなどの一連の機能を従業員に提供する「自己健康管理アプリ」(仮称)については、パートナー企業からの提供を予定しています。喫食データ収集には、カウンターにトレーを置くだけでメニューの登録ができるオートレジ「食堂楽」(エヌ・エス・システム)を採用。スマートレシートとの連携により、喫食内容をデータ化し、サーバーに配信します。

  • 東芝 浜松町・川崎本社の社員食堂を舞台に実証実験を計画している
    東芝 浜松町・川崎本社の社員食堂を舞台に実証実験を計画している

健康への関心が低い層への効果的アプローチを実現

「今回の実証実験のポイントは、将来の疾病リスク予測による“自分ごと化”、リスク低減シミュレーション(改善目標の設定)による“コミットメント”、社食での喫食都度の食事アドバイスによる“日常生活の中での継続的意識付け”の3ステップのアプローチで、多くの企業や健保組合が課題としている未病・健康無関心層の行動変容を促すことにあります。それらの効果を東芝の従業員基盤を利用して実証しようというのが狙いです」と東芝データ データ事業部 エキスパートの吉野 圭悟氏は解説します。現在同社は、料理レシピサービス事業者をはじめとする多様なパートナーとアライアンスを組み、スマートレシートの仕組みを利用した新たな事業スキームの創出に取り組んでいます。

  • 喫食データ収集には、オートレジ「食堂楽」(エヌ・エス・システム)を採用
    喫食データ収集には、オートレジ「食堂楽」(エヌ・エス・システム)を採用
  • 株式会社東芝 人事・総務部 人事・業務サポートセンター 本社勤労厚生担当 竹澤 光平氏 社員食堂の運用について話してくれた
    株式会社東芝 人事・総務部 人事・業務サポートセンター 本社勤労厚生担当 竹澤 光平氏 社員食堂の運用について話してくれた

RFIDで献立を自動認識し、喫食内容をデータ化

食堂楽は、食器に貼付したRFIDタグをレジカウンターで読み取り、自動認識を実現。喫食データは、給食事業者が提供する栄養価情報と一緒にヘルスケアサービス事業者に配信されます。

スマートレシートを活用した健康経営施策

「多少苦労したのは、社員番号とスマートレシートの紐づけに関する部分でした。今回は、社員証で決済することで、その情報をスマートレシートに反映させる形をとっています。今後同様のサービスを提供していく上で、スマートフォンだけで完結する仕組みの構築は大きなカギになると考えています」とエヌ・エス・システム システム企画営業部 次長の稲生 哲治氏はその苦労を語ります。

職域の食堂、売店の決済システムとして多くの実績を持つ食堂楽ですが、今後は自動決済システムとして一層のブラッシュアップを図っていきたいと営業部 部長の尾関 拓治氏は言います。

「その一例が、電子マネーやQRコードなどのマルチ決済への対応です。また画像認識技術の活用も課題です。DXインフラとしての役割を確実に果たしていくことを今後も心掛けていきたいと考えています」

健康意識が低い層へもアプローチが可能な本施策は、自治体等の健康寿命延伸の取り組みにおいても大きな役割を果たすことが期待されます。また本施策は実証結果を基に他社へも提案していくことを目指しており、喫食データを収集できる飲食店などの施設をどれだけ広げられるかが今後の大きなポイントになります。東芝テックは、協業するパートナーと連携し、エリアとしてのスマートレシート普及に積極的に取り組んでいく考えです。

  • 容器の底裏にRFIDを貼付。皿やお椀を自動認識し
                       メニューにもとづく喫食データを取得する
    容器の底裏にRFIDを貼付。皿やお椀を自動認識しメニューにもとづく喫食データを取得する
  • 容器の底裏にRFIDを貼付。皿やお椀を自動認識し
                       メニューにもとづく喫食データを取得する
    容器の底裏にRFIDを貼付。皿やお椀を自動認識しメニューにもとづく喫食データを取得する
  • エヌ・エス・システム株式会社 営業部 部長 尾関 拓治氏
    エヌ・エス・システム株式会社 営業部 部長 尾関 拓治氏
  • エヌ・エス・システム株式会社 システム企画営業部 次長 稲生 哲治氏
    エヌ・エス・システム株式会社 システム企画営業部 次長 稲生 哲治氏

*1 生活習慣病の発症リスク予測AIは、株式会社東芝と東芝デジタルソリューションズ株式会社が、SOMPOホールディングス株式会社と共同開発したものです。
2020年7月13日発表 「6年先までの生活習慣病リスクを予測するAIのサービス提供を開始」 https://www.global.toshiba/jp/company/digitalsolution/news/2020/0713.html
*2 生活習慣病の発症リスクを下げる生活習慣改善ソリューションを提案するAI https://www.toshiba.co.jp/about/press/2020_10/pr_j1501.htm

お客様情報

佐竹食品株式会社