晴れの日に行きたくなる
ワンランク上のとんかつ屋
大阪・兵庫を中心とする近畿エリアで揚げたてサクサクのとんかつを提供する「かつアンドかつ」。食欲旺盛な男性客が多いという従来のとんかつ専門店のイメージを覆すべく料理の美味しさはもちろん、清潔で高級感ある内装にもこだわり、家族3世代で楽しめるとんかつレストランとして着実にリピーターを獲得しています。ディナーの価格帯は2000円前後と、安さ重視の大手チェーン店とは一線を画すブランド戦略を推し進め、お祝い事など晴れの日に来たくなる「ワンランク上のとんかつレストラン」として地域のファンに愛されているのです。
「もともと『女性が入りやすいとんかつ屋さん』というコンセプトでスタートした業態です。ブランド肉の瀬戸内六穀豚をはじめ食材にこだわり、お手頃なランチと価格帯が一つ上のディナーとのメリハリをつけて展開しています」と話す柴田 憲利氏は九州出身。これまで飲食業界の管理職として培ってきた実績とノウハウが期待され、ダスキングループに所属する同社で店舗の開発など営業部門を率いる運営部長を務めています。
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店内は落ち着いた雰囲気のとんかつレストランを演出 -
ダスキングループ 株式会社かつアンドかつ
運営部長 柴田 憲利氏
テーブルオーダーの導入で
おかわり対応の無駄を削減
「2013年に東芝テック製のPOSレジシステムを導入してから10年以上が経ちましたが、特に大きな問題もなく、使いやすさを実感しています。飲食業界では人手不足が深刻ですが、当店では人が関わるところとITや機械に任せるところをしっかりすみ分けしながら質の高いサービスを提供しています。できる限り人手を介さない店舗づくりを目指す中で、従業員が『ありがとうございます』『また、お越しくださいませ』と心を込めてお見送りするという最後のところは大事にしていますね」
すでに、POSターミナルやPCから入力された経営に関わるさまざまな数字を本部で一元管理できる飲食店トータルシステムクラウドサービス「Fooding Works」を導入し、店舗のオーダー受注や仕入れ発注に活用している「かつアンドかつ」。今回、平野店のオープンを新しいチャレンジの機会ととらえ、まだ既存店舗では採用されていない自動釣銭機やモバイルオーダーシステムなどを導入しました。
「自動釣銭機を入れたことで釣銭額の差異に対する従業員のマネーストレスが解消されることは非常に大きいですね。お客様と従業員の間で『機械が読み取ったのだから確実』という安心感を共有できるようになりました。コロナ禍以降のテイクアウト需要を見越し、電話対応する従業員の手間を削減するためにモバイルオーダーシステムも導入しました。こちらは新しい平野店よりもテイクアウトの構成比が高い既存店の方が効果を検証しやすいと判断し、改めてチャレンジしていく方針です」と柴田氏が話すように、オープンから1年以上の検証を経て確実に効果を上げている自動釣銭機は2024年3月に明石店でも導入され、残りの全店舗にも順次導入されることが決まりました。
また、1店舗を除く15店舗で導入されているテーブルオーダーのシステムも業務効率を飛躍的に高めています。導入後のメリットはフロア人員の削減だけに留まらず、「おかわり自由」という業態特有のサービスでも発揮されています。
「当店ではご飯とキャベツのおかわりが無料。テーブルオーダーの端末を使うことで、その都度店員を呼びとめる必要がなくなり、気兼ねなくおかわりを楽しんでいただけるようになりました。近頃は大きな声で店員を呼ぶことに面倒臭さや恥ずかしさを感じる方が増えていると聞きますし、従業員も他の業務に集中できるでしょう」
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テーブルオーダーの導入で業態特有のサービス向上にも貢献 -
テーブルオーダーの導入でホール係のオーダーミスはなくなりました
会計時の利便性向上に加え
人の手前までのロボットも
また、柴田氏が今後の構想の一つとして進めようとしているのがクレジット端末のバージョンアップです。全てのカード会社に対応し、タッチ決済ができる東芝テック製の最新機器に変更する予定だといいます。
「まだまだ一組一組の会計の時間が長いと感じています。既存の機種で行っていた、お客様に暗証番号を入力していただいてカードを抜く、あるいはサインをいただくという会計業務を少しでも簡素化し、お客様の利便性も向上させていきたいと考えています。お客様のご要望に耳を傾けて検証しながら、その後の展開次第ではQRコードやバーコードによる決済方式も視野に入れなければいけないと感じています」
配膳用をはじめ飲食業界で導入が進んでいるロボットにも注目する柴田氏ですが、おかわりへの対応や食器のバッシングなど人手が必要な業務を補うだけでなく、各店舗の付加価値をより高めるための活用法を思い描いているようです。
「配膳に関しては、ロボットに席の近くまで持って行ってもらう仕組みも考えています。『ワンランク上のとんかつ屋さん』をコンセプトにしている当店では、食べ方の提案にも力を入れています。とんかつソースだけではなく、産地にこだわった塩や山椒を使う食べ方もお勧めしているので、その説明はどうしてもロボットではできない仕事ですし、人が丁寧に提供すべきサービスだと思います。その手前の業務をロボットでどこまでできるのかという検証を行いながら、効果が見込めると判断できれば積極的に導入していきたですね」
AIの普及によって、より緻密な集客・売上の予測が可能になりました。柴田氏は、すでに導入効果を発揮している「Fooding Works」がさらに進化し、AIによる高精度な売上分析やクラウドによる店舗コントロールなどを一元化できるようになれば、さらにお客様に寄り添ったサービスの提供につながると考えています。
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全てのカード会社に対応し、タッチ決済ができる最新機器に変更する予定です -
自動釣銭機は正確な会計業務と効率化に大きく貢献
「一つ上の価格帯を設定しているということもありますが、単に美味しいとんかつを食べるだけではなく、家庭では味わえない外食ならではの雰囲気や美味しさを味わい、晴れの日にホッとできる時間を過ごしていただきたいですね。物を売るだけではなく、心を売る。『食べに来て良かったな』という、食事して帰るだけではない空間をご提供するために従業員の教育にも力を入れていきます」
人手不足の解消や業務効率の向上を実現するために優れたITは積極的に導入すべきです。しかし、飲食店というサービス業で最も大切なのはお客様をもてなす心。「かつアンドかつ」が地域で選ばれ続ける理由は、その心を伝えるために最適なDX化を目指しているからではないでしょうか。