複数のeコマース事業者がシェアできる最新鋭の物流拠点
労働力不足に直面する物流業界では、業務の自動化が急務となっています。株式会社日立物流様の「スマートウエアハウス」は、商品保管・出庫に関するプロセスを標準化し、最新鋭設備とそこで働くスタッフを荷主企業が共有するサービスです。利用料金は、作業量と保管期間に基づき従量課金されます。その拠点として2019年9月、埼玉・春日部にオープンしたECプラットフォームセンターの自動化率は70%を超えます。
「サービスを提供する対象として想定するのは、ECのスタートアップ事業者様や事業拡大に伴い拠点を分散したいと考える事業者様です。通常、新倉庫立ち上げは、数年掛かりのプロジェクトになることもありますが、スマートウエアハウスであれば、事業者様と当社のシステムを連携することで最短1カ月程度からの準備期間で運用を開始することが可能です」(村上 宏介 センター長)
センターの最大処理能力は1時間あたり870件。1日20時間稼働した場合、最大1万7,400件の注文を処理できます。
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営業開発本部 デジタルビジネス開発部 部長補佐 兼 春日部ECPFセンター センター長 村上 宏介氏
B to Cで求められた、きめ細かい作業品質
スマートウエアハウスの課題の一つが、自動化されていない30%の人手による作業工程の品質確保でした。ECビジネスには「注文品が入っていなかった」「届いた商品が破損していた」というクレームのリスクが常に存在します。同社は一部倉庫の天井に設置したカメラで庫内を撮影する仕組みを導入していましたが、それだけでは B to C の繁雑な作業を追うのは困難でした。
「我々はクレーム対応を作業エビデンスに基づいて行える体制を構築することで、荷主様に安心してご利用いただきたいと考えました。そのために必要になったのは、作業者の手元の動きまで逐一映像で記録すると共に、作業データと連携することで、必要な映像を即座に検索できる新たな仕組みです」(寺井 勝一 主任技師)
省人化された倉庫では、作業者の意図的な不正の抑止も重要な課題の一つです。スマートウエアハウスはお届け先の個人情報が目に触れることのない作業環境を整えるなど、多様な工夫が図られていますが、映像による監視システムは不正の抑止力としても効果が期待できます。
新拠点竣工を前に同社は2社に提案を依頼。東芝テックが提案した「ジャーナル(指示書)連動映像検索システム」を選定しました。自社システムとの多様なデータ連係が容易に行えることがその最大のポイントでした。
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ロジスティクスソリューション開発本部 スマートロジスティクス推進部 主任技師 寺井 勝一氏 -
録画した映像はサーバに保存され必要に応じて検索・閲覧できる -
無人搬送ロボットなどを導入し省人化された最新鋭設備 -
搬送された棚から商品をピッキングする作業を一部始終撮影する
生産性向上への貢献も期待。映像・作業データ連携
倉庫業務において運用されるデータ項目は、注文番号や注文内容、担当した作業者など多岐にわたります。同社は作業エビデンスを確保するために必要になるデータ項目を抽出し、映像検索システムに入力。映像と各項目を紐づけることで、キーワードを入力して検索すれば即座にピッキングや梱包作業の状況が映像で確認できる仕組みが実現しました。
「映像と作業データの連携は、サービス品質の確保だけでなく、生産性向上にもつなげていきたいと考えています。スタッフには、作業を早く終えられる人もそうではない人もいます。映像検索システムで、作業が早い人の作業映像を確認・分析して効率化のヒントを探すことや、逆に作業が遅い人の問題点を抽出することが可能になります。今後は、こういった面でもシステムを活用していきます」(槻木 裕一 主任)

監視カメラ台数は、2,000坪のフロアに31台。カメラは各作業者に対応しています。倉庫新設に合わせて導入された今回は、本稼働前に行った設備検証時の際に不具合を発見することにも貢献しました。
同社は今後もAIによる自動検品などの取り組みを通し、倉庫業務の自動化を積極的に推進していく考えです。映像検索システムはスマートウエアハウスのサービス品質の向上に貢献し続けます。
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ロジスティクスソリューション開発本部 スマートロジスティクス推進部 主任 槻木 裕一氏